From the New World
停滞期からの脱出 ~トップスピード練習の真実~
※この記事は「タイパー Advent Calendar 2023」の3日目の記事です。
*** 目次 ***
・自己紹介
・今年の主な活動記録
・はじめに
・トップスピード練習
トップスピード練習を定義する
なぜトップスピード練習をするのか
具体的な練習方法①:「実質N打鍵理論」で最上位層のタイピング速度を想定する
具体的な練習方法②:単語別練習
・まとめ
*** 自己紹介 ***
・ハンドルネーム
司(つかさ)
・競技タイピング歴
約8年半
・使用キーボード
RealForce R3
・自己紹介
Dvorak配列を使って、主に英語の競技タイピングをしています。
よくプレイするタイピングゲームはタイプウェル英単語、e-typing英語、typeracer、monkeytypeです。
普段はTwitterで活動しています。
*** 今年の主な活動記録 ***
・タイプウェル英単語
基本英単語:25.416(ZF) -> 23.663(ZE)
総合:ZG -> ZF
・タイプウェル憲法E
おそらく)非公式1位達成(1156405pt, ZH)
・e-typing
英語:750pt -> 820pt
・typeracer
bestrace:195.75wpm -> 226.42wpm
・monkeytype
15s:233wpm
60s:201wpm
・KeyMasters 2023(海外のタイピング大会)
23位(予選落ち)
*** はじめに ***
本記事は、日本語タイピングならmiri氏やくわな氏、英語タイピングならrocket氏やshaz氏など、
いわゆる「最上位クラス」のタイパーを目指して練習することを前提に書いております。
*** トップスピード練習 ***
ではまず、皆さんのお手元のキーボードで「ラジオ(rajio)」と入力してみてください。
......
タイピングしたときの打鍵音はどのようになりましたでしょうか。
「ジャララッ(3打)」の方もいれば、「ドドッ(2打)」のようになった方もいらっしゃると思います。
ここで仮に、あのmiri氏がrajioを打鍵したとします。すると、その打鍵音は限りなく「ド!!!!!!!!!!(1打)」に近いものになったはずです。
「そんな速く打てないし、そもそも指が動かない」
「打てたとしても安定するはずない」
……と思われた方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、仮にエタイRが200pt~300ptの方だったとしても、「5個のキーをギュッと同時に押し込む」イメージで試行すれば、
数回~数十回に1回程度はmiri氏とほぼ同じ速度で打鍵できる、と僕は考えます。
この部分に、タイピング練習、ついてはトップスピード練習の本質があるのではないかと僕は考えています。
次項では、具体的に本記事で取り扱うトップスピード練習とは何かを定義したいと思います。
トップスピード練習を定義する
一般にトプスピ練習と言えば、
・「自分が可能な限り」速く打つ
・ミス度外視で速く打つ
といったようなものが挙げられるかと思いますが、少し曖昧です。
本記事では、トップスピード練習を
・最上位層の打鍵速度を想定し、それと同等の速度が出るように単語別練習をする
と定義したいと思います。
要は、1単語だけなら、ほとんどの人が最上位クラスと同等の速度で打鍵できる(と思われる)ので、
それを練習におけるスタートラインにしよう、ということです。
具体的には、打ちやすい単語で2000kpm程度、普通程度の単語なら1500kpm程度、打ちにくい単語なら1000kpm程度でしょうか。
打鍵速度を想定……と書きましたが、実際に打鍵している動画があるならそれで確認すればよいですし、記録から速度を逆算できるならそれでもよいです。
それらがないという場合は、最上位層の打鍵速度をおおまかに推定する方法を後の項で書いていますので、そちらもご確認ください。
なぜトップスピード練習をするのか
トップスピード練習をすることで、
・「もっと速く打っていいんだ」というシンプルな気付き
を得ることができます。復帰直後の自分を振り返ってみると、
・ある一定以上加速するのはリスクが大きいと感じ、速度をセーブして正確性・安定重視で打つ
このような考えで練習していて、基本的に自分の制御できる限界を超えてまで加速しようとはしないスタイルでした。
このようなスタイルで練習していた結果、実際に正確性・安定性は向上し、そのおかげで記録も多少は伸びましたが、
海外のトップタイパーやテル氏のタイプウェル記録に大きく近づくような「速度のブレークスルー」が得られることはありませんでした。
・もっと速く打っていいんだ
というより、
・少なくとも単語レベルでこのくらい速く打たないと最上位層になれない
という現実を知ることができます。
……
ところで、アルペジオを速く打鍵した場合、taji→taijのように入力が逆転してミスをするリスクがあります。
同様に左右交互に関しても、kane→kaenのようになるリスクがあります。
・いくらトップスピード練習やら速く打つやら言ったって、ミスをしてしまうリスクがあるのだから、ある程度は速度をセーブしないといけないのでは?
僕も以前はこのように思っていました。
しかしこれは体感ですが、速く打ったときのリスクによって生じるスコアのマイナス分よりも、
速度を高めることによるスコアのプラス分の方が圧倒的に大きいように思われるのです。
先のrajioの例でいくと、仮に打鍵音が1打になるくらい速く打ったとしても、
練習を積んでミスする確率を減らしていくことで、最終的にリスクよりリターンが大きく上回るだろうということです。
繰り返しになりますが、本記事では、
・200wpm~300wpmの超高速域においても、十分な練習を積むことでミスの確率を限りなく減らせる
コレを前提に話を進めております。
実際、海外の最上位勢を見ている限りでは、それは人間にとって十分可能なことであると僕は確信しています。
以上を簡潔にまとめると、
・トップスピード練習により速度を高める方法は、一見するとミスのリスクが高そうだが、最終的には速度面のリターンがミスのリスクを上回る
よって、トップスピード練習をすることでタイピング速度を大きく向上させられる、といった感じでしょうか。
具体的な練習方法①:「実質N打鍵理論」で最上位層のタイピング速度を想定する
トップスピード練習をするにあたって、まずは最上位層の速度感を把握するところから始めます。
TypeLighter等のデータを公開してくれている方がいれば、それに越したことはないのですが、非常に稀です(というか多分いない)。
なので僕の場合、自分で勝手に「実質N打鍵理論」なるものを考え出して使っていました。
この理論について、具体的な単語を例にして説明します。
1.最適化などを考慮し、単語の打鍵パターンを指番号に変換する(rajioなら、41789)
2.各指の打鍵回数をそれぞれ数え上げる(rajioなら、指1,4,7,8,9がそれぞれ1回ずつ、他は0回)
3.各指の打鍵回数の最大値を答えとして求める(rajioなら MAX(指1の打鍵回数,2の打鍵回数......0の打鍵回数) なので、答えは1)
4.その単語は、実質「求めた答え」打鍵のようにして打てる(圧縮できる)
といった感じです。何だコレと思われた方もいらっしゃるかもしれません。
もしかすると、人によっては「打鍵音」で考えたほうが分かりやすいかもしれないです。
例えば、「たじたじ(41784178)」なら答えは2になるので、打鍵音が「ドドッ」に限りなく近くなるまで圧縮できるということですし、
「ありがとう(14841497、標準運指)」なら、答えは3になるので、打鍵音が「ダカダッ」になるまで練習で詰める、ということになります。
あるいは、「連打と同指のみ0打鍵にできない(1打鍵として加算する)」という状況の下で単語を何打鍵にできるか、とも言い換えられるかと思います。
実際にはここに最適化や運指、キーボードの性能等も絡んでくるので、
あくまで最上位層がどれくらい速く打っているかを想像するためのお助けツールとして捉えていただければ幸いです。
具体的な練習方法②:単語別練習
上記の実質N打鍵理論などで最上位クラスのタイパーの打鍵速度が想定できたら、実際に練習で詰めていく段階に入るわけですが、
僕は単語別練習をオススメします。
理由としては、
・「単語、あるいは単語未満の部分」の打鍵速度の向上によってのみ、全体のタイピング速度を向上させることができる
と思っているからです。
例えばですが、毎日練習を続けた結果、ある日、タイピング速度が全体的に1.05倍になる……といったことは起こり得ないと考えます。
スポーツでも勉強でもそうだと思いますが、
「100m走が0.1秒速くなった」ことは、各筋肉・心肺機能の成長やら脚の動かし方などの部分的な成長が積み重なった結果だと思いますし、
「英語のテストの点数が10点上がった」ことは、これも同様に、単語・文法・リスニングなどの部分的な成長が積み重なった結果だと思います。
「タイピングのコツを掴んで一気に伸びた」経験がある方もいらっしゃるかもしれませんが(実際僕もあります)、
それについては、あるタイピングゲームにおいて頻出のパターンやスペースキー、シフトワークなど、
記録向上において多くを占める「部分」が短期間で大きく伸びたため、そう感じたのだと考えます。
Twitterを見ていると、単語別練習などの全体を部分に分けた練習をしている方は非常に少なく感じられます。
タイピングにおける部分というものを重要視していない方が多いのかなと思います。
僕としては、上記の理由から、この「部分の練習の積み重ね」が練習において一番大事なんじゃないかなと思っております。
単語別練習を行う場合は、現時点でもやはりタイピング練習ソフト「TypeLighter」を使うのが一番適切なのではないかなと思います。
もしくは、タイプウェルを1単語区切り、あるいは2単語区切りで打つ、というのが個人的にはオススメです(2単語の場合スペースキーの練習もできます)。
またこれに関しては言うまでもないことですが、単語別練習といっても、通常の運指を逸脱して打つことは全くオススメできません。
単語の打鍵速度でランキングを競う場合はそれでもいいと思いますが、多くの人にとってはタイプウェルやエタイ等、
ある程度のボリュームがあるテキストでランキングを競うことになると思います。
記録狙いをする環境と同様の運指で練習するのが大前提です。
*** まとめ ***
・1単語だけなら、最上位層と同等の速度で打てる(仮説)
・ある単語について、最上位層の打鍵速度を想定する
→実質N打鍵理論
・単語別練習を行う
→TypeLighter, タイプウェル
・部分の打鍵速度が向上することで、全体のタイピング速度も向上させることができる
今回は書きませんでしたが、厳密に言えば、英語やタイプウェルの場合スペースキーの練習であったり、
実用英文ならシフトの練習であったりなども練習しなければいけないと思うのですが、
本文が無駄に長くなってしまうだけなので、今回は単語というところに焦点を当てて書いてみました。
僕が復帰後記録を伸ばすことができたのは、間違いなく、海外の最上位勢の動画を見て「自分はもっと速く打っていいんだ」ということに気付けたからだと思います。
この記事を読んだ一人でも多くの方が、できるだけ早く、それに気付けることを祈ります。
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